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-4. 絵の具の物語

こちらの作品のベースに塗ってあるこの白い色は胡粉(ごふん)と言いまして、
胡の国(ペルシャ)から伝来して中国、朝鮮半島経由で
昔の日本にはるばる伝えられたものなんですけど、
この素材と技法を今も使ってるのは日本だけらしいんですね。
この胡粉について話すと長くなるんですが、イタボ牡蠣っていう貝があるんですけど、
その貝殻を7年間天日干します。
あまり食べてもおいしくないそうです(笑)
カラカラになったものを石臼でごりごり粉砕して、水を張った沈殿槽に入れて
沈んだ泥状のものを杉板に1ミリ程の厚さに塗って1週間乾燥させます。
それをパリッと割ったものがこの白い顔料です。

気が遠くなりますね…
でも、素材自体が日本ぽいですね。
自然のものを時間をかけて材料にする感覚が何と言うか日本的。

だから皆さんがこの作品を見る時は、白い背景を見ているようで、
実は海を眺めているんですよね…というロマンチックな背景がまた魅力的なんです!

あー!素敵ですね!絵の具に「物語」があるんですね!

この胡粉はお雛様のお顔や能面にも使われていて、つるっとした妖艶な白が特徴なんですね。
そして、この白を生かしたいって思って誕生したのがFancyシリーズなんです。

またこれとはぜんぜんちがう作品ですよね(笑)
っていうかぜんぜん日本画に見えない。

一見、イラストみたいなキャラクターを描いているようで、素材や技法は日本画です。
つるつるっとしててひんやりする妖艶さ。
さわっていただくとわかるんですけど。
その素材の感触を伝えたくてこういう作品が誕生するという物語もあるわけですね。
もう高校生の頃から私は日本画の素材たちに恋をしてるんです(笑)

絵って構図だったり筆使いだったり、表面しか見てなかった…
というかちゃんと表面を見てなかったってことですね(笑)
いま伺って材料にも物語があって、その物語がまた作品の物語になったりして、
すごい感動してます…。
あと5時間くらい聞いてたい(笑)

こういった素材のおもしろさを伝えつつ、
一方でこの作品は2016年に奉納させていただいたんですけど…。

-5. 奉納作品について

ようやくこちらの作品に戻ってきました(笑)
きれいな絵ですね…。
これは何をテーマにお描きになったんですか?

この作品はもともと奉納するために描いたわけではなく、
池上大坊本行寺で個展をやりませんか?というお話をいただいて、
どのような作品がふさわしいかなと思って…
ここは日蓮上人がご入滅された由緒あるお寺さんで、
個展の会期がちょうど日蓮上人にちなんだ行事があるということで、
では日蓮さんの何かを描かせていただこうと思ったんですけど、
私、日蓮さんのこと何も知らなくて…

私もです(笑)

歴史上有名なお方とは知ってましたが、「南無妙法蓮華経」ってなんだろう?とか、
いろいろお話を伺って境内を案内していただいたりしましたが、
ぜんぜんインスピレーションがわかなくて途方に暮れてたんです。
そんな時、寺務の方で日蓮さんに詳しい方にお人柄や人生を聞いていく中で、
そうだ、お生まれになった場所に行ってみよう、ということで、
千葉の小湊という鯛の浦まで取材で訪ねることにしました。
そこでは、海の近くで、日蓮上人が生まれた時に
鯛が群れをなして押し寄せた、鯛が湧いたという伝説があるんですけど、
私が行った時もボートで海に出るとほんとに鯛がわーって群れてきたり、
海上で眺めた景色を舞台にした作品を描くことにしたんです。
ここに小さく鳥居も描いてありますが、ここは鯛の浦です。

いろんなものがあちこちに描き込んであって、
何時間でも見てられる…。

日蓮さんは法華経を世に広めるために教えを説いたり勇気づけたり、
人のために生きてこられたんですね。
そして、とても親思いだったのに親孝行ができなかったそうなんです。
そんな背景を思い出しながら、この作品を描いていたら何かこみ上げるものがあって…
思わず泣いて描くこともありました(涙ぐむ)
そこで、絵の中で親孝行させてあげられたらなって…(両側の光はご両親を表現しています)
三人なかよくおさまってる作品にできたら日蓮さんもご両親も喜んでいただけるかなって…

ああ…いいお話ですね…(涙ぐむ)

そして、個展の後に、今回のご縁をくださった池上家のご親族の方から、
お寺にご奉納いただけませんか?
榊山さんの作品は池上大坊が百年も千年もお守りします、とお声がけくださって。
それで奉納させていただくことになったんです。
ちなみに、真ん中に南無妙法蓮華経という日蓮宗のお題目も描き込んであるんですよ。

あ!気づいてなかったです!
細かいところにもちゃんと意味があるんですね…

作品っていろんな在り方があるなって。
その人の姿かたちはもちろんですけど、人生を描くこともできるし、
叶わなかった夢や祈りを描くこともできるんですね。
でも本来の絵ってそうだったと思うんですよ。
人との出会い、心の安らぎとか、私は絵の在り方をそちらの世界に戻したいなって。

お話を伺って私は絵のこと何も知らなかったなって。
見たものを平面にきれいに描き込むみたいなことだと思ってたんですけど、
ぜんぜん違うなって、この絵に出会って思いました。

-6. 榊山敬代の物語

そもそも絵はお上手だったんですか?
たとえ私に素晴らしいインスピレーションが降りてきて、
こういう構図が思い浮かんだとしても、私は描けないです…

上手いというより好きで描いてたんですけど…。
私って小さい時から「どうしてどうして人間」だったんです。
どうして空は、昨日は白で今日は青なのとか、どうして勉強しなきゃいけないの?とか…。
お勉強はまったく興味持てなかったんですけど、ピアノと絵を描くのは次元が違うなって。
それ(勉強)に比べて気持ちが込められるし、何かワクワクするし、
絵を描くと友達が喜んでくれるので、あ、喜んでくれるからまた描こうって。
ポスターとかで賞を獲ったりすると、おじいちゃんとおばあちゃんが
すごい喜んでくれたんですよね…。
ピアノがきれいに弾けると親が「上手!」って喜んでくれる。
それがうれしい。
なので、勉強は頑張る意味が分かりませんでしたね…。
それに比べて、芸術って人を笑顔にする魔法だなって。

小学生になると、勉強ができない現状に私も父親も困っていた時に、
父親が「たかよは左脳が止まってるから右脳で生きなさい!」って(笑)
あ、そうかと開き直って、その頃から左脳とお別れして、
右脳で生きていく人生を歩もうと決めました。
それからは、絵やピアノに専念する人生が始まりましたが、
上手いとか下手とかじゃなく人を喜ばせたくて夢中でした。
で、高校に行く時に、絵かピアノか選ばなきゃいけなかった。
ピアノもそこそこでコンクールとかでもいいとこまで行くんですけど、金賞は獲れなくて銀賞止まり。
練習いっぱいしても、一発勝負だし、毎回人前で弾くのは心臓が飛び出そうだし…。
でも、絵だったらコツコツマイペースに続けられる自信があったんですよ。
で、高校で美術科の高校へ進学して日本画と出会いました。
絵の道に進んでからは、上手いとか好きとかでもなく、人が驚いてくれるとか
笑顔になってくれたりするのがうれしくて、そういう風に生きたいなって
思うようになりましたね。
オートバイもそうじゃないですか?
お!とか、かっこいい!とか。驚きや笑顔に導いてくれますよね…

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